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突然思いついて書いただけで、実在の人物とか団体とは全く関係ございませんので怒らないで下さいねというかなんと言うか、フィクションなんだから本気にしちゃ嫌よ、ってなもんです今日この頃

その男が城下に下りると、民衆は皆恐れおののいた。

男は領主の息子である。誰も逆らうことなど出来ないのだ。

「清様!もう年貢は納めました。もう我が家に米はないのです!」

もちろん嘘だ。だが、全てが嘘かと言えば、そうではない。

年貢を納めた後、農民が備蓄している米の量などたかが知れている。

おまけに今年は不作だった。それでも決められた量を律儀に上納した彼らは、結果として自分たちが日に食する量を大幅に減らすこととなった。

米はある。あることにはあるが、人に分け与える分までは無いのだ。

キヨシ、と呼ばれた領主の息子は耳を貸す素振りも見せず、土足で框を踏みしめた。

ならば今炊いている飯を寄越せ、と言うのだ。

「お待ち下さい!清様、それだけは、それだけは!」

これは家族が楽しみにしていた飯だ。稗や粟で飢えを凌ぎ、ようやく家族揃って白米を食すと決めたその日を心待ちにしていたに違いないのだ。

故に、主人は羽交い絞めにしてもこの男を止めなければ、と着物に縋り付く。

そこで無慈悲な白光に照らされ、主人は息を呑んだ。

領主の息子が抜刀したのだ。

悲鳴を上げる妻。恐怖で言葉も無い娘。

それでも主人は、傍若無人な男の前に立ちはだかった。

――が、無手の農民にはそこまでが限界だった。

肩口から袈裟に斬り付けられ、紅い血を流しながら主人はうつ伏せに倒れこむ。

畳が死の色に染まる。

妻は娘を力いっぱい抱きしめ、その惨状を見せまいとした。

しかし女の細い腕の隙間から、涙を堪える我が子が、領主の息子を睨み付けているなど、誰が想像できただろう。

領主の息子はくく、と耳障りな笑いを漏らし、紙切れを二人の前に放った。

台紙である和紙の上に色とりどりの折り紙が貼り付けられ、城の背後にそびえる雄大な山――その陰に沈み行く夕日が描かれている。

褒美だ、と言い捨て、家族三人分の米が入った飯櫃を満足そうに眺め、

「――おにぎりが、食べたいんだな」

領主の息子――その名を、山下清と言う。

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